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出身国の妊娠・出産・育児の特徴に関する情報
(バングラデシュ)

■イスラム教徒の場合

バングラデシュは、イスラム教を国教に定めており、国民の約9割がイスラム教徒(ムスリム)です。以下に、イスラム教を背景としたバングラデシュ人の妊娠・出産・育児の文化的特徴をご紹介します。

・ハラル(ハラール)

ハラルとは、イスラム法で許されたこと・物のことです。具体的には、許されている行動や食材などを指します。妊娠中の栄養指導や入院期間中の食事(厳格なハラル対応希望、肉は全て不可、豚由来の成分のみ不可、ハラル制限なし等)や児の栄養(母乳のみ、ハラルミルク希望、一般の粉ミルク使用可等)、使用可能性のある薬剤(ゼラチンなど豚由来成分を使用した薬剤使用の可否等)についてもハラルを考慮した個別的な配慮が求められます。

・礼拝(サラート)

ムスリムは、イスラーム暦(太陽暦)に従い、1日5回(日の出前、正午すぎ、日没前、日没直後、就寝前)の礼拝を行います。また、礼拝前には手、口、鼻、顔、腕、髪、耳、足を水で清めるウドゥという儀式を毎回行います。一般的に悪露が排出されている産褥期は礼拝を行いませんが、妊娠期に入院した場合などは、多くの妊産婦さんがベッド上またはベット横の床などで礼拝を行います。ムスリムの方の病室を訪ねる際や家庭(電話)訪問等の予定を入れる際には、礼拝時間を考慮したタイミングを考慮するとよいでしょう。

・同性による対応を希望

多くのバングラデシュ人女性はクルアーンの聖句に従い、貞淑であること、視線を下げて極力男性と視線を合わせないこと、限られた家族以外には顔と両手以外の身体を見せないこと等の規律を守って生活しています。そのため、妊婦健診時から産後の育児期まで可能な限り男性との接触を避け、女性の保健医療従事者が対応することが望まれます。また、夫(児の父親)への対応の際も、可能であれば男性による対応が望ましいでしょう。

・アザーン(Adhan)とイカーマ(Iqama)

出産直後または第一沐浴(産湯)後に、新生児の右耳からアザーン、左耳からイカーマを唱えて聞かせる通過儀礼です。アザーンとは礼拝の呼び掛け、イカーマは礼拝がまさに始まろうとする時の知らせであり、児がムスリムとして人生のスタートを切る大切な儀式です。日本で出産する場合、実施者の多くは児の父親です。父親が出産に立ち会う場合は分娩室内で、立ち会えない場合は初回対面時の廊下や褥室などで行われることが多いようです。

・ティップ(印)とお守り

バングラデシュでは出生直後から3歳頃までの子どもの額に、黒い墨などを用いて痣のような大きなティップ(印)を描いたり、目の周りを大きく隈取り独特な化粧を施す習慣があります。こうしたティップや化粧を施す理由は、子どもの顔が可愛いと悪魔に命を取られてしまうからだと言われています。また、出生直後の児の周囲にハサミやニンニク、唐辛子等の魔除けの品を置いたり、お守りが入った腰紐や首飾りを身につける習慣もあります。そうした魔除けの品については断りなく片付けたり取り外したりしないよう留意し、ご両親の意向を確認するようにしましょう。

・割礼

誕生した児が男児の場合、割礼を行う習慣があります。一般的に、割礼は生後7日目までに行うのが望ましいとされていますが、日本では小児割礼を行う病院が少ないため、生後日数にこだわらず、バングラデシュや他のイスラム教国に渡航した際に手術を受けるケースが多いようです。

■ヒンドゥ教徒の場合

イスラム教に次いで信仰者が多い、ヒンドゥ教を背景とした妊娠・出産・育児の文化的特徴の一例です。

・妊娠期から出産直後の儀式

ヒンドゥ教徒のバングラデシュ人は、妊娠期間中に胎児が男児であることを祈願する儀式や悪霊払いの儀式を行う習慣があります。また、誕生後には聖水をかける通過儀礼を行います。

・不浄(けがれ)期間と不浄明けの儀式

ヒンドゥ教では、褥婦は産後30日間、児は出生から10日間を不浄(けがれ)期間と考えます。一般的に児の不浄が明ける生後11日目に命名と剃髪の清めの儀式を執り行い、周囲に児の誕生を公表します。この清めの儀式を機に児は不浄が明けますが、母親の不浄期間は続くことから、授乳以外の児の世話は姑や親族の女性達が行う習慣があります。

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