日本で暮らす外国にルーツを持つ子ども・子育て支援サイト
 

保健医療制度(ペルー)

項目 内容
国民皆保険
2002 年 1 月 29 日に保健省法第 27657 号によって公布された包括的医療保険 (Seguro Integral de Salud - SIS) が創設され、同様に、必須医療保険プラン (PEAS) ができた。2009 年 4 月 9 日の法律第 29344 号により、他の健康保険に加入していないすべてのペルー人およびペルーに居住する外国人を対象としたユニバーサル健康保険が制定された。 これは、投薬、処置、手術、必需品、葬儀券、緊急搬送をカバーしているが、補償範囲は保険プランによって異なる。どれか一つ以上のプランでカバーされている病気は1400以上に上り、数種類のがんも含まれている。
SISには5つのタイプがある
  • 無料の SIS: 極度の貧困にある人々、貧困層、妊婦、子供、消防士、その他規則に含まれるグループを対象とする。
  • SIS For All: 経済状態に関係なく、健康保険に加入していない人々を対象とする。
  • 独立した SIS: 低コストで希望するあらゆる国民を対象とする。
  • SIS マイクロビジネス: 従業員の登録を希望するマイクロビジネスのオーナーを対象とする。
  • SIS Entrepreneur: 監督下に従業員がいない独立した労働者 (美容師、洋裁師、ガス整備士など)を対象とする。

付記
ペルーにおける医療保険には以下の種類がある
  1. SIS:雇用や民間の自己負担保険による社会保障を受けていない人に対して州が提供する保険
  2. 国の社会保障の一環 (EsSalud): 正式に企業に雇用されている人が加入し、給与から差し引かれる保険
  3. 個人または家族単位で加入する民間会社の保険
  4. EPS保険:一部の企業が民間保険会社と契約する補完的な保険。EsSaludに相当する金額が差し引かれる。
  5. 軍隊や警察官向けの保険。陸軍・海軍・空軍・警察の関係者を対象とする個別の病院がある。
  6. 無加入:保険に加入せずに医療費を全額自己負担する。
母子保健に関する法律・制度
ペルー政府は、人的資本への公共投資として、主に妊婦の健康と5歳未満の子どもの健康と発達の改善に貢献することを目的として、一連の政策、戦略、規制を実施している。すべてのペルー人のための栄養と食事に関する国家的規模の健康増進策は以下の通りである。
  • 2002年:国家協定 - 2002 年
  • 2011 年 2 月 (国家協定で承認) 200 周年計画 – CEPLAN –。
  • 子どもおよび青少年のための国家行動計画 001-2012-MIMP。
  • 「成長するために含める」戦略 008-2013-MIDIS および「Childhood First」ガイドライン 010-2016-MIDIS。
  • 小児、青少年、妊娠中および産後の女性における貧血の治療および予防管理のための健康基準。MINSA 2017.
  • 貧血対策のための多分野にわたる計画 2018-2021 No. 068-2018-PCM
これらの政策、戦略、計画は、国内のすべての医療施設に義務付けられており、その目的は以下である。
  1. 母子保健の一環として、貧血を治療し予防するために、3歳未満の子ども・妊婦・青少年に鉄サプリメントを摂取させるとともに、家庭での鉄分 摂取を強化する。
  2. 家庭、地域社会、医療施設で提供される栄養カウンセリングやデモンストレーション教育を通じて、鉄分が豊富で多様で栄養価の高い地元の食品を適切な量取り入れ、乳児と妊娠中の食事習慣を改善する。
  3. 個人および世帯に接触する機会を最大限にいかすために、保健部門の介入は、教育、社会福祉、水と衛生、漁業などに関する支援と同時に実施するものとする。
  4. 鉄分が豊富な動物由来の食品の入手可能性と、重要な分野の幼児および一般人口向けの鉄分と微量栄養素が豊富な強化製品の開発を促進する。
  5. 母子の貧血および ICD の軽減と管理のための優先介入を測定および監視する仕組みを設置する。
上記の政策や計画はすべて実際の施策として実現された。主立った施策は以下の通りである:
  • 思春期の女性に鉄分と葉酸が提供された
  • 保険施設と連携した健康教育活動が、学校において実施された。
  • 妊婦の健康状態を知るため、妊娠初期からの産前ケアに、HIV検査、梅毒検査、尿中ヘモグロビン検査の4つが加えられた。
  • 生後6ヶ月間の完全母乳育児の実践が推進された。
  • 生後6か月以降の子どもを対象に実施されたヘモグロビンスクリーニングの結果、貧血なしと判明した者には点滴や微量栄養素補給が、貧血ありと判明した者には硫酸第一鉄シロップによる継続治療が実施された。
  • 生後4ヶ月以降の女児および男児を対象に予防的鉄分補給と、サプリメント摂取量確認を目的とするカウンセリングとフォローアップ訪問が実施された。
  • 出生前管理が実施された。
  • 妊婦の早期管理が実施された。
  • 出産ケアが実施された。
  • 子どもの成長と発達の観察が実施された。
  • 予防接種が実施された。
  • 小児に蔓延する病気のケアが実施された。
  • ヘモグロビンスクリーニングが実施された。
  • 栄養の補給と補完を実施した。
  • 家庭訪問が実施され、健康的な食事と栄養摂取が推奨された。
ペルー国家は母親およびその子を保護するために法を定め、その中では母と子が権利の主体であることを明示している。新しく発布された児童青少年法は、すべての人間について、胎内に宿ってから12 歳に達するまでは子供、12 歳から 18 歳に達するまでは青年とみなしており、以下の規定を含む:
  1. 児童青少年法第 26644 号:妊娠中の母親の産前および産後の休息の権利を規定している。出産前後 90 日間(累積される場合もある)であるが、多胎の場合には 30 日延長され、単胎・多胎ともに、希望があれば8 日延長される。
  2. 第 30367 号: 働く母親の権利を保護するため、雇用主が正当な理由なく妊婦を妊娠中に解雇することを禁止している。
  3. 第 28048 号:妊娠中の労働者に、胎児を危険にさらす可能性のある仕事を拒否する権利を保障し、雇用主には、妊娠中の労働者を一時的に別の職に異動させることを認めている。
以上のように、ペルーの法律では、妊娠された子どもについて、その保護は母親と家族の第一の義務であるだけでなく、国家にも、上掲の法律に従い公共福祉政策を通して国家としての保護の責任を果たす義務があると明記されている。すなわち、家族、国家、社会のすべてが妊娠期から子どもを守られなければならないとされているのである。
小児の保健医療福祉教育に
関する法律・制度

小児医療サービスに関する法律・施策には以下がある。
  1. 子どもと青少年のための国家行動計画 2012 ~ 2021 年
  2. 5 歳未満の子どもの成長と発達を監視する基準
  3. 子どもの食品と栄養に関する規制
  4. 家庭内暴力と児童虐待の予防とケアのための基準と手順
  5. 女子少年の総合的な健康管理に関する技術基準
保健医療サービスの提供体制
ペルーの医療機関は、1)私立病院、2)国の健康保険加入者対象の病院(EsSalud)、3)誰でも受診できる公立病院(MINSA)の3種に大別される。2)と3)は公立病院である。3)は主に貧困層を対象としており、設備が老朽化して衛生上の問題が懸念されている。2)は3)と比べて設備が整っているが、受診者は国の保険加入者に限定され、大変に混雑している。1)の多くはリマにあり、比較的整った設備を持つが診療費は極めて高額で、民間の医療保険への加入者、富裕層、外国人などが利用している。
医療レベル別の公立・私立病院の数
医療レベル公的病院私立病院
MINSAEsSaludMINSA+EsSaludの合計
I-14333143343389
I-2208911322022223
I-312129913111535
I-43031331677
II-19641137106
II-233154831
II-E12214139
III-1198274
III-2112131
III-E4151
分類できず7276148*
合計818437185557506

  • 妊娠・出産を専門に扱う医療機関数:全国に64
    提供するサービス:妊婦の健康問題の早期発見、胎児の健康問題の早期発見、妊婦に特化したケア、出産時の特別なケア、新生児と新生児の専門的なケア、産後ケアと家族計画
  • 子供の病気の予防と治療を担当する保健センター数:444
    提供するサービス:専門的な保育、予防接種、臨床検査、栄養失調の予防、病気に対するケア・治療・リハビリテーション
  • 病気の子どもを専門に治療する医療機関:国立 4病院、地域141病院
    提供するサービス:低出生体重児または超低出生体重児、未熟児、新生児感染症、さまざまな複雑な病状を示す新生児の管理

出典: 研究協力者(医師Manuel Ige氏、ペルー在住)が現地の関係機関から収集した情報
保健医療サービスの提供体制の前半の文章、外務省 世界の医療事情 ペルー からの情報 https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/cs_ame/peru.html
(アクセス日:2024年1月10日)